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石綿含有仕上塗材について

建築用仕上塗材は、建物の内・外壁及び天井の表面に、吹付け、ローラー塗り、こて塗りで凹凸模様やゆず肌模様などに仕上げられる材料の事です。主にその目的は美装又は下地の保護になります。
下塗り・主材塗り・上塗り等の工程が基本で、石綿は施工時のダレや塗膜のひび割れを防止するため、主材と下塗り及び下地調整材に含まれている事が多い。
但し、それらの石綿繊維はセメントや合成樹脂等の結合材によって固められている為、石綿含有量も少なく仕上塗材自体は塗膜が健全な状態であれば、石綿が発散しないとされています。
石綿がそこにあるという事が、大変な問題ではなく、何らかの原因で、飛び散ったり、吸い込んで、体内に入ってしまう事が問題なのです。
その為、解体工事はもとより、改修工事で塗り替えや洗浄作業時においても、注意が必要で、適切な処理が求められます。

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塗装材の種類 期間 石綿含有量(%)
建築用仕上塗装材(水系・溶剤系・セメント系)
薄塗材C(セメントリシン) 1981~1988 0.4
薄塗材E(樹脂系リシン) 1979~1987 0.1~0.9
外装薄塗材S(溶剤系リシン) 1976~1988 0.9
可とう形外装薄塗材E(弾性リシン) 1973~1993 1.5
防水形外装薄塗材E(単層弾性) 1979~1988 0.1~0.2
内装薄塗材Si(シリカリシン) 1978~1987 0.1
内装薄塗材E(じゅらく) 1972~1988 0.2~0.9
内装薄塗材W(京壁・じゅらく) 1970~1987 0.4~0.9
複層塗材C(セメント系吹付けタイル) 1970~1985 0.2
複層塗材CE(セメント系吹付けタイル) 1973~1999 0.1~0.5
複層塗材E(アクリル系吹付けタイル) 1970~1999 0.1~5.0
複層塗材Si(シリカ系吹付けタイル) 1975~1999 0.3~1.0
複層塗材RE(水系エポキシタイル) 1970~1999 0.1~3.0
複層塗材RS(溶剤系吹付けタイル) 1976~1988 0.1~3.2
防水形複層塗材E(複層弾性) 1974~1996 0.1~4.6
厚塗材C(セメントスタッコ) 1975~1999 0.1~3.2
厚塗材E(樹脂スタッコ) 1975~1988 0.1~0.4
軽量塗材(吹付けパーライト) 1965~1992 0.4~24.4
建築用下地調整塗材(モルタル系)
下地調整塗材C(セメント系フィラー) 1970~2005 0.1~6.2
下地調整塗材E(樹脂系フィラー) 1982~1987 0.5
  • ※表記はあくまでメーカーによる製造の年数であるため、現場調合の建築材料の場合は施工年数だけで断定することはできません。
  • ※表記は日本建築仕上材工業会の資料より抜粋しております。

まとめると

  • 「石綿含有 仕上塗材」1970~1999年まで使用。
  • 「石綿含有 下地調整材」1970~2005年まで使用。
  • 2006年以前の建築用仕上塗材・下地調整材は石綿を含有している可能性が高く、仕上塗材よりも下地調整材の方が含有している可能性が高いと言えますので要注意です!
  • セメントリシン
  • セメントリシン
  • セメントリシン
  • セメントスタッコ
  • 吹き付けタイル
  • 除去後

他人事ではありません!!
様々なところにアスベスト工事があります。

外壁(石綿含有)改修工事において、下記の作業例があります。

  • 塗膜の浮きや、露筋・爆裂のある外壁の高圧洗浄作業
  • 仮設足場組立の為、外壁を穿孔しアンカーを打ち込む作業
  • RCを斫る、ALCやPCを切断する作業
  • クラック補修の際のU・Vカットを行う作業

石綿含有外壁仕上塗材の様々なケース

  • ケース①塗材または下地調整剤に含有している場合

  • ケース②塗材と下地調整剤両方に含有している場合
    1. 改修工事か解体工事か、
    2. 含有層はどこなのか、
    3. 塗材・下地調整剤は無機系か有機系か、
  • ケース③複数の層の塗材に含有している場合
    下地調整剤にアスベスト含有が無い場合、一番安価な剥離剤?法をメインとします。

施工方法や含有部位による取り扱いの差異

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除去材 吹付け材
(吹付リシン、吹付タイル等)
ローラー、コテ塗り等
(下地調整材等)
廃棄物の処理方法 特別管理産業廃棄物(廃石綿等)
除去LEVEL判定 大気汚染防止法施行規則別表第七第一の項下欄イ~チの事項を遵守し除去等を行うが、同等以上の効果を有する措置を講じた場合(LEVEL3相当)
事前調査
作業計画届 ※1 不要
特定粉塵排出等作業届出 ※2 不要
隔離養生 自治体ごとに確認が必要

※1 労働基準監督署に提出

※2 自治体環境局等(各自治体によって変わります)に提出

※石綿含有建材に接触せず、振動等による石綿の飛散のおそれがない場合には大気汚染防止法の対象外です。

外壁アスベスト対策工事の要点

1、適切なサンプリングと分析

下地コンクリートの劣化防止のために使用されるさまざまな建築用仕上塗材には、微量ながらもアスベストが含まれている場合があります。
しかし、仕上塗材に含まれる石綿は、重量比0.1~1%未満の低い濃度の物が多く下塗り・主材塗り・上塗りの過程で複雑に幾層にも重なっており、その上で、石綿が含有している層を特定する事は難しいとされています。諸官庁への届け出の有無、工費・工期の圧縮、適切な工法選定による石綿の取り残し防止などを考慮し、適切なサンプリング、及び分析を行う必要性があります。

2、石綿含有層に相応した工法の選定

適切な層別の分析及び、サンプリングで得た情報をもとに工法選択します

作業基準例

各レベル共、解体・改修を前提として、石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業を伴う作業を基準とする場合です。

LEVEL1(石綿含有吹付け材)
  • 完全隔離養生し、密閉空間とする。
  • 作業員は専門の保護具を着用する。
  • 作業場内を陰圧に保つ設備と洗身設備が必要。
LEVEL2 同上
LEVEL3
  • 湿潤化し原則手作業で行う。
  • 保護具は取り換え式半面防塵マスクを使用する。
  • 養生は外部の風散防止を行う。

工法比較表

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施工方法 剥離剤(薬品)工法
 

集じん装置付き超高圧
水洗工法(100MPa以上)

湿式集じん装置付き
ディスクグラインダー工法

1人あたりの
1日作業能率
約10~25m2/日 約25~30m2/日 約10~15m2/日
下地調整材除去 下地調整材(セメント系) × 下地調整材(セメント系) ◎ 下地調整材(セメント系) ◎
注意点
  • 下地調整材の除去は不可能
  • ジクロロメタンは使用不可
  • 設備設置場所の確保が必要

石綿含有建築用仕上塗材の各種処理工法

厚生労働省の「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.10版]」において、石綿則第6条ただし書きにより、粉じん飛散防止に関し隔離措置と同等の措置と判断しうる目安として、以下の工法が挙げられています。

1、剥離剤併用手工具ケレン工法
剥離剤を使用し、有機系の既存仕上塗材層表面に塗付する事によって、軟化させて、柔らかくなった仕上塗材層の劣化部分を手工具(スクレーパや皮すきなど)で除去する工法です。
開口部回りなど 機器による工法では除去できない部分へも有効です。
ただし、無機系(セメントやけい酸塩を結合剤とする)の下地調整材や仕上塗材には効果が無いので適用出来ません。

2、集じん装置付き超高圧水洗工法(100MPa以上)
湿潤・除去・吸引を同時に行える工法で飛沫防止カバーを取り付ける事によって、壁面等から跳ね返った水が周辺に飛散しないため、石綿含有仕上塗材の除去等にあたっては有効で仕上塗材の厚みに左右されにくく、施工能力は他工法に比べ圧倒的に高い。
しかしながら、開口部回りや入隅など飛沫防止カバーによって超高圧水が作用しない部分は他工法で補助する必要があります。
プラント設置に大きなスペースが必要であり、廃棄物の分別や水の処理にコストと労力が掛かります。

3、(湿式)集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法
集じん装置を使用して粉じんの飛散を防止する工法です。平面且つ圧着が容易な箇所においては粉塵の発散が比較的低く、狭小部まで除去出来ますので、手工具よりも施工能力は高い。
しかしながら、不陸や出隅の除去を行ったり、グラインダーの反力で圧着が弱まると非常に大量の粉塵が発散します。
自治体によっては「隔離措置と同等」とは認められず、全周の養生を求められています。

上記の工法については、大気汚染防止法上の運用においても、施行規則別表第7第一の項下欄柱書の「同等以上の効果を有する措置」と判断しうる目安とする事が出来ます。